美しの国、美しの米

美しい田んぼが広がる日本の原風景

初夏、田植え後の鏡のように輝く水面、夏の強い日差しを浴びてぐんぐん成長する稲の青さ、秋風に波打つ黄金色の稲穂、厳冬に耐え静かに地力を蓄える田んぼ。四季折々の移ろいを見せる美しい田んぼは日本の原風景であり、今も各地に息づいています。
はるか3000年もの昔に中国の長江から稲作が伝えられて以来、日本ではお米づくりが国づくりの基本となり、暮らしを支えてきました。稲作が盛んになったのは、高温多湿の日本の気候が稲の栽培に最適で、地中のミネラルをたっぷり含んだ水が栄養分となり、毎年同じ田んぼでのお米づくりを可能にしたからです。
しかし、険しく急な山が国土の大半を占める日本では、田んぼの開発は容易ではありませんでした。ひとたび大雨が降れば土石流が発生し、川が氾濫します。日照りが続けばたちまち渇水となります。これを防ぐために川をせきとめ、流れを変えてゆるやかにし、ため池や用水路を整備して田んぼに水をひいたのです。田んぼに水の出入口を設け、水が順々に流れるように何枚もの田んぼをつなげたのは、水を大切にすればこそつくられたシステムです。水を蓄え、水量を調節できる田んぼは、ダムのように洪水を防ぐ機能があり、多様な生物が生息する環境をつくる役割も果たしているのです。

農家の人たちの手間と思いがお米をおいしくする

お米づくりには、たくさんの労力がかかります。また、田んぼに水をためるために土地を平らにし、川やため池から水を引きいれるのも一人ではできません。たくさんの力を合わせることが必要で、お米づくりのために人が集まり、そこに村ができ、お互いを助け合う「結(ゆい)」と呼ばれる精神が生まれました。
現在は機械化が進み、お米づくりにかかる労力は軽減されましたが、地域の結びつきは変わらず大切にされています。おいしいお米をつくるために美しく豊かな自然をみんなで守り、一粒のお米も無駄にしないように慈しみ育てているのです。

「ごはん」のある食卓に家族の笑顔が広がる

農家が手間をかけて育てたお米をいただいて、日本人は命をつないできました。家族が集まる食卓の中心にはふっくら炊きあげたおいしい「ごはん」があり、旬の野菜や魚、肉と一緒に味わいながら季節を愛で、会話を楽しみ、家族の絆を深めて、豊かな心と健康をはぐくんできました。
日本で食事を始める時に使う「いただきます」のあいさつは、自然の恵みを尊び、その命をいただくことや、つくってくれた人に感謝の気持ちを表すものです。食事が終わったときの「ごちそうさま」のあいさつも、走り回るという意味の「馳走(ちそう)」という言葉に、お客様をもてなすために食材を調達した人への感謝が込められています。
食べたいものがすぐに手に入る飽食の時代になりましたが、お米は人と自然、農家と家庭を結び、地域や家族のきずなを強くするかけがえのない食べ物です。