お米のつくり方

八十八の手間をかけるお米づくり。

「米」という漢字をよく見ると、八十八という数字を表す漢字から成り立っていることがわかります。「米」をつくるには「八十八の手間」、すなわち煩雑な作業と膨大な仕事量が必要だという意味なのです。文字通り、日本の農家は多くの手間をかけ、心をこめてお米をつくってきました。そして、それらの作業はすべて、日本の気候風土にかなった、季節に沿ったものです。
日本の学校や企業では、4月から新しい年度が始まります。春は始まりの季節。お米づくりも同じです。早春から始まり、夏を経て、収穫の秋へと進みます。季節と寄り添いながら、たくさんの手間をかけるのが日本のお米のつくり方なのです、雨に恵まれた日本では、ほとんどが水稲です。四季を追って、農家の水田で行われているお米づくりを紹介しましょう。

田んぼを耕し、苗を育てる、春。

長い冬が終わり桜のつぼみが赤く染まるころ、お米づくりが始まります。春まだ浅い3月、農家は「田おこし」に取りかかります。よいお米をつくるには、よい土づくりが欠かせません。田んぼの土を起こし、わらをすき込むなどして土を柔らかくし、田んぼに水がしみこみやすいようにします。
よい稲を育てるためには、よい苗づくりも不可欠です。春、農家は「苗づくり」にも精を出します。収穫したもみの中からよい「たねもみ」を選び抜いて蒔き、水の中で発芽させます。この間、もみの消毒や乾燥など細かな作業が続き、発芽後も肥料を与えながら苗がある程度の大きさに生長するまで大切に育てます。
次はいよいよ田植えの準備。田んぼに水をいれて肥料をまき、土を平らにならす「代かき(しろかき)」という作業を行います。苗を同じ深さで植えられるように、水の深さも均一にします。
夏の日差しを感じる頃、暖かく風のない日を選んで、長さ12〜13cm程度に育った苗を水田に植えていきます。昔は1株ずつ手作業で植えていましたが、現在は田植機での作業が一般的です。植えられた苗は根を張り、根に近い茎の節から新しい茎を増やし、茎の芽の部分で穂を作ります。やがて穂の中に花のもとが作られていきます。

害虫や雑草から田んぼを守る、夏。

気温の上昇とともに稲が育ってくると、農家は田んぼの管理に忙しくなります。とりわけ水の管理が大切で、朝晩田んぼに行き、必要な水が確保されているかを確認します。水が不足している場合は水を入れ、稲の生育によっては水を抜く、といった作業を繰り返します。
稲を育てるには大量の水が必要なため、多くの農家では川やため池から引いた水路から水を田んぼに入れます。しかし、山が多い日本には、斜面を階段状にした「棚田」と呼ばれる田んぼも多く、そうした田んぼでは、上から下へ順番に水を流す方法がとられます。こうして大量の水を広い面積に与えるため、お米づくりは地下水を豊かにするともいわれています。また、稲が育つこの時期、日本ではちょうど「梅雨」を迎えるため、季節の恵みを受けて稲はすくすくと生育するのです。
さて、水の管理と並行して行うのが「防除」と呼ばれる雑草や害虫の対策です。除草剤をまいたり、害虫が増えないように田んぼと田んぼの境である「あぜ」の雑草を刈るなど、多くの手間をかけます。そして稲の生長にあわせて肥料をやりながら、夏の間ずっと稲が育つのを見守るのです。

たっぷり実った稲穂を刈り取る、秋。

暑い夏が過ぎ、秋の訪れを感じる頃、田んぼには黄金色の稲穂が揺れます。いよいよ「稲刈り」の季節がやってきました。まず刈り取りしやすいように田んぼの水を抜き、次にコンバインと呼ばれる機械を使って「稲刈り」と、稲穂からもみ殻を取り除く「脱穀」を行います。その後、脱穀した「もみ」を乾燥機などでゆっくりと乾燥させ、周囲の殻をとって玄米にします。
選別機にかけた後、多くは農業協同組合(農協)などで品質検査などを受け、米卸業者やスーパーなどに出荷されます。こうして大切に育てられたお米が、日本の各家庭に、あるいは諸外国に届けられるのです。農家によるたくさんの手間をかけた丁寧な仕事と、日本の美しい四季。これらがあってこそ、日本米のおいしさが生まれてくるのです。